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神代邸に到着した俺は、その壮大過ぎる外見に絶句していた。
とにかく、デカイ。デカ過ぎる。今朝ここを出た時はさほど気にならなかったというか、そんな余裕なんてなかったが、改めてまじまじと見ると、そのデカさにただただ呆けてしまう。
道路と敷地の境界には鉄格子がかけられ、見える限りだけでも数個もの防犯カメラが設置されている。その鉄格子を抜けてからもだだっ広い庭が……いや、それはもはや庭などという可愛いものではない。鉄格子の向こう側には、公園が広がっていた。もしここが一般解放されれば、休日には多くの家族連れが訪れ、さぞや賑わうことだろう。
そしてその奥に聳え立つのが、神代邸である。
まるで中世ヨーロッパの王宮。丸みを帯びた壁は純白で、水垢一つない。3階以上は確定だろう建物は、学校の校舎のように横に伸び、中がどれほどの広さを誇るかなど一般市民の俺には想像すら出来ない。
勇者は旅に出るときに、王が住まう城から出発するのが定例である。
とどのつまり、神代は毎朝この王宮を出発し旅立っているということか。確かに勇者っぽい。そこだけは。
「何をしている。さっさと行くぞ」
至極当たり前のことだが、神代は一切臆することなくガンガン奥に進んでいく。そりゃそうだけど。自分ちだし。
かなり今更な話だが、神代の奴はそうとうなお嬢様なのかもしれん。こんなところに一人と使用人多数で住んでいるし、天上天下だし、唯我独尊だし。
見た目超絶美少女で、お金持ちのお嬢様で、そして勇者というなんとも摩訶不思議な存在は、本当に俺を監視するのか怪しいレベルで、俺の前方をきびきび歩き続けていた。
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