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「――ここが悠斗さんの部屋です」
馬平さんは天使の如き言葉をかけながら、とある部屋の扉を開く。
「この部屋って……」
案内された部屋は薄暗く、埃臭かった。
家具にはシーツがかけられ、長く使われた形跡がない。
「ちょっと部屋の空気を入れ替えますね」
馬平さんがカーテンを束ね窓を開けると、外から新鮮な風が流れ込んで来る。舞い上がる埃は光の粒子となって、外へと運ばれていった。そして夕陽に照らされた室内は、その全容を露わにした。
広い……。
そう言おうとした直前、馬平さんが申し訳なさそうに言ってきた。
「少し窮屈な部屋で、すみません……」
「きゅ、窮屈……?」
何を血迷ったことを。
見たところ俺の家の一階部分全域くらいの広さを誇るこの部屋が、窮屈とは。これで窮屈なら俺の部屋なんぞ秒で窒息死するわ。
「贅沢を言える立場か。部屋を与えられるだけマシだと思え」
相変わらず神代はマウントを取りやがる。
いや全然贅沢なんて言ってませんが? むしろご褒美に近いのですが?
それでもそれほどタカビーに言われると感謝する気も失せるわ!
だが神代は一切気にすることもなく、さっさと次の話題を投げかけた。
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