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店員さんが戻った後、神代がふと呼び掛けてきた。
「ん?」
神代に視線を向けると、胸が高鳴った。
夕陽に照らされた彼女の髪は金色の光を纏い、赤い瞳の奥は少しだけ揺れる。そして彼女は、優しく微笑んでいた。
「……ありがとう、悠斗……」
なんだろうか。神代を直視出来ない。
こいつにもこんな顔が出来たことが嬉しくて、こそばゆくて、恥ずかしくて、妙な言葉で誤魔化すのに必死になった。
「……いいのかよ。勇者が魔王にお礼なんか言ってよ」
「いいんだ。例え相手が魔王であっても、時には礼を言いたくなるときもある。だから、いいんだ……」
そして彼女は、再び外の景色に目を戻した。
少しだけ、彼女の中のしこりのようなものは小さくなったのだろうか……。だとしたら、貴重な小遣いを失った甲斐もあったというものか。
「お待たせしました~!」
店員さんがバカみたいにデカいコーラフロートを持って来る。神代はキラキラと目を輝かせながら、それを見つめる。
おそらく、再び爆食いが始まるだろう。
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