編入

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 僕は晴れて盲学校に通うことになった。目が見えないなどと嘘をついたのも全てマリアと同じ学校に通うためだった。  目が見えないということになってしばらくは家で過ごした。その間マリアを見ることが出来なくて気が狂いそうだった。  母親は会社を辞め、僕の生活をサポートしてくれた。母親は盲目の人について学び、一緒になって点字を覚える練習をしてくれた。  僕は盲人が一般に点字を習得するよりもだいぶ早く点字を覚えた。実際には目で見ていたから点字そのものを覚えるのは早かった。逆に手の感触だけで分かるようになったのはとても遅かった。  母親の前では僕は目が見えない振りを貫いた。母親は僕の視力が回復することを願って何度も繰り返しテストした。毎日いろいろなものを僕の目の前で動かしたりして、うっとおしかったけど全て無視しつづけた。テストをして僕が無反応なのを確かめる度に、母親は僕に気づかれないように声を出さずに涙を流した。  ある時、母親が買ってきた盲人についての本をこっそり読んで、強い光すらもわからない完全な盲目の人というのはそれほど多くないことを知った。マリアはどうだろうか。僕は盲学校に早く通いたいと母親にねだった。  盲学校へは母親と一緒に行った。本当は学校の場所も知っていたし、一人で歩いて行くことも出来たけど、おとなしく母親に連れられていくことにした。そのほうが盲人らしいからだ。 学校の先生の前でも僕はボロを出さないように演技した。先生はとても人の良さそうな若い男性で、僕の母親と話す間はずっと笑顔を絶やさなかった。  医者にも編入を勧められていたし、先生は僕の目が見えないということを疑うこともなく入学を許可した。それからしばらく僕は母親に送り迎えしてもらって学校に通うことになった。
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