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マリアはたまに目を開けたまま窓の方向に顔を向けてじっとしていることがあった。
彼女も光を微かに感じることが出来るのかと疑問に思い尋ねてみたけど、彼女は強い光さえ全く感じない完全な盲目だと言っていた。
窓から差し込む光の熱を肌で感じているらしい。目の見えない人は、視力の代わりに他の感覚がとても敏感だった。
個人差はあるものの、その傾向はマリアだけで無く他の生徒にも見られた。彼らは音に関しては特に敏感だった。
音を立てないように注意して、ある男子生徒に近づいてみたことがある。彼は僕が近付いてきたということに完全に気づいているようだった。足音も全く立てなかったはずだけど、移動する気配だけでそれが誰か判別できるようだった。
また、この学校では授業の一環として盲人用のアナログゲームをプレーすることがよくあった。それらは大抵、音や感触の違う駒などを使ってプレーするものだった。
目を使ってプレーすればそれはゲームにならずに全く面白く無かったので、僕は目をつむって彼らと同じ条件でプレーするのだけど、目を使わずに僕が彼らに勝つことは稀だった。
ある日僕は、事務室から勝手に借りてきた懐中電灯をマリアの顔に向けてみた。彼女は常に目を瞑っていたので、まぶたの上から光を当てて反応をうかがった。視力のある人間であれば、まぶたの上からでも強い光を感じて、反応を示すはずだったが、彼女が光に気づいた様子は全く無かった。
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