たとえ、言われても。

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「こ……こんにちは」 「佐藤絵美里さん。お会いできるのを楽しみにしていましたよ。どうぞ、ソファにおかけください」 そういうマスターは顎に白い髭を生やし、これまた白髪のボリュームのある髪を綺麗にセットしていた。皺の寄った微笑みは、どこか安心感を与えてくれる。絵美里がふかふかとしたソファに腰を降ろすと、先ほどの少女が、温かいおしぼりを持ってきてくれる。ミントの良い香りがする。 「本日のコース内容となっております」 少女がテーブルの上にメニュー表を置いた。 「え……コース?喫茶店なのに」 「はい。当店はその方に合ったメニューを(あらかじ)めご用意させていただいております。何かアレルギーはございませんか?」 「ありませんが……」 絵美里はメニュー表に目を落とし、狼狽(うろた)えた。 そこには 1 記憶 2 理解 3 目醒め 4 ○○ と、記されているのみだ。
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