1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
シカバネは美しい、カバネとは一線を画すものだ。カバネは色づくことはない、けれどシカバネは薄紅色や桃色を創り出してくれる。
永遠の美しさと引き換えならば、儚きひととせの生など捨てようとなんの問題もありはしない。
どんなに栄華を誇ろうとどうせカバネになるのだから、最も栄えあるシカバネになるのになんの躊躇もありはしない。
だけどひとつだけ気になることがある。
「ふふっ……」
木になる僕が気になるだなんてくだらないにもほどがあるけれど。
「どうして君はずっと泣いている?」
僕の枕元にいる死神。
君が泣けば泣くほど僕の周りにはサクラの花びらが舞う。
「ーーーーーーーーーーーー」
駄目だ。口は動いているけれど僕の鼓膜は動かない。
「君は僕をシカバネにできるのだろう?」
いつもの問い。
当然答えはない。
「僕はきっとすぐに死ぬ。今は何もなくてもすぐに死ぬ。君よりずっと先に死ぬ」
「ーーーーーーーーーーー!!」
何かを叫んでいるようだ。
僕には聞こえない。
「シカバネになれば僕は永遠だ。美しくいつまでも在る」
「ーーーーーーーーー」
何か言っている。
僕には聞こえない。
「僕はシカバネになりたい、そのサクラ色の刃で貫けば僕はそうなれる」
「ーーーーーーーーーーー」
泣きながら懇願している、ように見える。
僕には聞こえない。
「お願いだ。僕を君のシカバネに」
「ーーーーーーーーーー」
サクラが舞う。
サクラ色がきらめく。
最初のコメントを投稿しよう!