屍・桜・針鼠

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シカバネは美しい、カバネとは一線を画すものだ。カバネは色づくことはない、けれどシカバネは薄紅色や桃色を創り出してくれる。 永遠の美しさと引き換えならば、儚きひととせの生など捨てようとなんの問題もありはしない。 どんなに栄華を誇ろうとどうせカバネになるのだから、最も栄えあるシカバネになるのになんの躊躇もありはしない。 だけどひとつだけ気になることがある。 「ふふっ……」 木になる僕が気になるだなんてくだらないにもほどがあるけれど。 「どうして君はずっと泣いている?」 僕の枕元にいる死神。 君が泣けば泣くほど僕の周りにはサクラの花びらが舞う。 「ーーーーーーーーーーーー」 駄目だ。口は動いているけれど僕の鼓膜は動かない。 「君は僕をシカバネにできるのだろう?」 いつもの問い。 当然答えはない。 「僕はきっとすぐに死ぬ。今は何もなくてもすぐに死ぬ。君よりずっと先に死ぬ」 「ーーーーーーーーーーー!!」 何かを叫んでいるようだ。 僕には聞こえない。 「シカバネになれば僕は永遠だ。美しくいつまでも在る」 「ーーーーーーーーー」 何か言っている。 僕には聞こえない。 「僕はシカバネになりたい、そのサクラ色の刃で貫けば僕はそうなれる」 「ーーーーーーーーーーー」 泣きながら懇願している、ように見える。 僕には聞こえない。 「お願いだ。僕を君のシカバネに」 「ーーーーーーーーーー」 サクラが舞う。 サクラ色がきらめく。
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