屍・桜・針鼠

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ハリネズミはサクラの古い友人さ。 ヒトがサクラと結ばれるまではハリネズミがサクラの守護者だったんだ。 儂だってそうだった。そりゃあ何本も守ったもんだ。 「ん?なんだあれ?」 サクラのヒトがシカバネのなりそこないを抱えてやがる。あれじゃあ苗木は色づかねえ。それどころか枯れるかもしれねえ。 「おい嬢ちゃん、そいつどうする気だ?」 「ハリネズミ……あなたには関係ない話……」 「つってもなあ、儂もハリネズミの端くれだ。サクラが枯れるのをむざむざ見すごすわけにゃあいかねえ」 「ほっといて……」 「しかしなあ……その出来損ないじゃなあ」 「これはシカバネじゃない。カバネでもない」 「じゃあなんだってんだそいつは」 「……分からない。生きてて欲しかったヒト」 「でもそいつはもう……」 「ねえハリネズミ……私はどうしたらいいのか分からない……もうこのヒトは動かない。私の刃でこうなった。でも埋めるのもいやなの」 「わがままな嬢ちゃんだな。儂から示せる道は二つだ。一つ目は今すぐその出来損ないをシカバネにして埋めるか、そのまま朽ち果てるかだ」 「それは……」 「なあ嬢ちゃん。そいつは最期になんて言った」 「……私のシカバネにしてくれって」 「叶えてやれよ。そいつの願いを」 「でも……」 「このままじゃそいつは腐ったカバネになる。シカバネならどうなるかは分かるな」 「……そう……だね」 嬢ちゃんが出来損ないの首に手を掛けた。 少しずつ力がこもっていく。 「ごめん……なさい……私が……来たから……ごめん……なさい」 サクラのヒトはヒトよりもよっぽど強い。出来損ないが完全なシカバネになるのにそう時間はかからなかった。 サクラが舞う。 シカバネの上に積もった花弁。 一本のサクラが咲いた。
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