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「ごめんなさいよ」
程なくやって参りましたのは、内神田一帯を縄張りとしている万蔵という親分さん。いささか寸足らずで、顔も体も丸々っちい――ちょいと貫禄には欠けますが、縄張り内のことなら知らぬ事は無いという、ご本家の伯父さんの折り紙付きでございます。
「ご本家から一通りの話はうかがって参りやしたがね。あの娘はどうにもいけません」
「ってえと? どこの誰だかは、もう――?」
「ええ、まあ……」
親分、やけに奥歯に物の挟まったような言いようで、渋い顔をしている。
「するってぇと、なんですかい。よっぽど身持ちの悪い女なんで?」
茶汲女は遊女とは異なりまして春をひさぐ商売ではございませんが、別に恋愛禁止じゃないもんで、後のことは相談次第――なんの相談だか分かったもんじゃない。
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