9人が本棚に入れています
本棚に追加
「これ清三よ。こう先生は仰るが、なんぞ胸につかえている物があるのか」
「……へえ。でも、あの、言えば叱られますから」
「叱ったりはしねえよ。いいから何でも話してみろい。それとも何か? この俺に隠し事をしようってぇのか」
励まされたり脅かされたりして清三が、ようよう口を開きますことには、
「実は……暮れに親方のお使いで、神田の御親類まで行って参りやした」
「おう、行かせた行かせた。須田町のな、本家の伯父貴の所へな」
「その道すがら、ふっと魔が差しまして――」
「……魔が差して……?」
「済みません済みません、ほんの出来心なんで――」
一体何をしでかしたのかと、さすがの親方も息を飲みます。
最初のコメントを投稿しよう!