搗米屋

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「途中、西広小路で……そのう……名代(なだい)の幾世餅を五つ買いやした」 「五つもか!?」 「ほら、怒った」 「いやいや、怒りゃあしねえ、呆れただけだ。エェ、胸につかえてきやがった」  幾世餅と言えば、焼き餅にあんこをこう、たっぷりと塗りつけてありますもので、もっぱら左党の親方は、話に聞いただけでも胸焼けがしてしまう。  使いの途中で買い食いなんていうのは、あまり褒められたことでもありませんけれども、まァよくあることで。大体、清三のような酒も煙草も女遊びも知らないような朴念仁。他に小遣い銭を使う所なんてございません。
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