12歳、夏

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 エースを見上げて細めた目から、まぶたの中に残っていた涙が頬に転がり落ちた。  陽向は急いで涙を拭った。拳で、きゅっ、と。答える代わりに、エースに向かって少し笑った。  おーけー、って意味に受け取ったんだろうか。エースも小さく笑った。抜けるような青空によく似合う無邪気な男の子の顔で。  陽向の手を離した。  ベンチに戻っていく背番号1を見送ることなく、陽向もグラウンドに背を向けた。  夏休みはまだ半分ぐらい残っていたけれど。  終わった──と、感じていた。二度とない夏が、終わった。
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