12歳、夏

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 八月。  球場の芝生の緑に、日差しが強く弾けていた。  軟式野球少年団の、六年生最後の大会だった。県の決勝。──勝てば、全国大会に出場できた。  戦うのは月丘メッツと白楠ホワイトソックス。陽向はメッツの4番バッターだった。  白楠ホワイトソックスは月丘メッツとは違う市のチームで、今まで公式戦も練習試合もしたことがないチームだった。けれど、エースピッチャーがすごいタマを投げるというのは、試合前のミーティングでコーチに聞いていた。  ブルペンで練習する相手エースの投球に合わせて、陽向は軽くバットを振った。エースは左投げだった。バッターの手元ですっと伸びるきれいなストレートを投げていた。  わくわくした。あのタマと勝負できるんだ。
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