2

5/9
225人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
「おめぇは、その子と真っ当に生きていくなら、まずは極道を辞めなきゃなんねぇ」  尤もな言葉に、聖はうなだれた。 「はい……」 「だが、ヤクザってのはなぁー―なるのは簡単でも、抜けるのは大変なんだ。深くこの世界に係わりすぎちまった今の状況では――そう易々と行かないかもなぁ……青菱の連中も、案の定おめぇに色込みで目を付けていやがる。昔のように、オレの力がもっと強かったら……」  苦し気に溜め息をつき、正弘はそれでも、聖を安心させるように言った。 「……もうしばらく、様子を見て大人しくしていろや。オレが何とか、青菱に顔が立つような――縁のある(極道一家)に根回しをしてやるからよぉ」  そう、言ってくれた。  だが、それがかなり難しいことを、誰よりも聖は知っていた。  正弘を、天黄組を、今以上に厳しい立場に追い込んではならない。  青菱には、関西の橋本会とのいざこざで大きな借りがあり、天黄組は安泰と言える状況ではなかった。  多額の上納金を収めるために、上野にあった土地の幾つかを引き払ったのだから。  そして、聖自身も、何度も己の身体を犠牲にしなければならなかった。  盃事を執り行い、極道になった以上、(青菱)に命令されれば否とは言えない。  それがこの世界の(おきて)だ。  そうと知っていて極道になったのだから、東堂の一件と違い、もう逃れることなどできない。  腹なら、決まっていた。  一番は、心にある人で叶ったのだから、もういいのだと。  それでも日々、聖の身体を(おもんばか)って少しでも庇おうとしてくれている正弘を、これ以上苦境に立たせてはダメだ。  だから、散々悩んで考えて――――あの、新年の会合の席で宣言したのだ。
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!