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伝令
それは突然やって来た。
「イゾウだな?デルタ城の城主様がお前をお呼びだ。すぐに出発の支度をしろ」
イゾウは稼業侍である。
稼業侍とは、いわば賞金稼ぎのようなもので、王の護衛から暗殺までの幅広い極秘任務を遂行して報酬を得る職業である。
イゾウは稼業侍として30年のキャリアがあり、稼業侍の世界では有名な男であった。
妻のフィルとまだ9歳の一人娘であるミサとの幸せな三人暮らし、そろそろ稼業侍引退も考えていた矢先、デルタ城の使いが現れたのだ。
任務の性質上、稼業侍の住まいは公表されていない。イゾウに仕事を依頼するのは武器商人のブルードという初老の男で、イゾウはブルード以外からの仕事は受けてはこなかった。イゾウとブルードの付き合いは長く、イゾウが稼業侍を始めるきっかけを作ったのもブルードであった。
「こんな夜中に何の用だ?というか、なぜ、ここがわかった?」とイゾウは使いに問うた。
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