気付いた時には落ちていた

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「は……? いや、え?」 「今頃気付くなんて遅いんだよバカが」 「え、ちょ、まっ、ええっ!?」 「言っとくけど倉内のアドレスは絶対教えねーから。つかお前だけじゃなくて絶対誰にも教えねー」 「はぁ!? なんだよそれ!? ……え? あれ? お前、もしかして倉内のこと……」 「じゃあな」 「あ、おい待て! 河西! 待てって! おい! 今のどーいうことだよ! 説明しろ! おい!」 二人の声がだんだんと小さくなっていく。私は身体中の力が抜けて、へなへなとその場にしゃがみ込んだ。 ……な、なに今の。 〝倉内美奈が可愛いのは最初からだろーが〟 河西くんの言葉だけが頭の中をぐるぐると駆け巡る。体温がさらに上がった気がして、思わず顔を両手で覆った。頬から伝わる温度が熱くて熱くて仕方ない。 ねぇ河西くん。それはどっちの倉内美奈のこと? 私? それとも、みんなが思ってる倉内さん? 胸がぎゅっと、つかまれたみたいに苦しい。 「…………どうしよう」 ああもう、隣の席なのに。 明日からどんな顔して河西くんに会えばいいのか全然わかんないんだけど!! 《了》
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