気付いた時には落ちていた

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うちの学年には倉内(くらうち)美奈(みな)という名前の女子生徒が二人いる。いわゆる同姓同名というやつだ。 一人は誰もが認める超絶美少女。 すっと通った鼻筋にぱっちりとした大きな目、薄桃色に色付いた頬に、形のいいぷっくりとした唇。スラリと伸びた細長い手足によく似合う白い素肌は、まるで陶器のような滑らかさ。 廊下に出れば男子に囲まれ、街を歩けば芸能事務所のスカウトがやってくるという。まさに、漫画に出てくる理想のヒロインにぴったりな完璧な女の子だ。 そしてもう一人は誰もが認める平凡な女の子。 可もなく不可もない顔立ち──まぁ、強いて言えばくっきりとした二重まぶたがチャームポイントだろうか。平均的な身長に体重。黒い髪を二つに結び、授業中に今日の夕飯なんだろな、なんて考えている、そこら辺にゴロゴロ居そうな普通の女子高生。 廊下に出れば男子に囲まれるなんてこともなく、街を歩けば寄ってくるのはティッシュを持ったキャッチセールスのおにーさんくらい。まさに、漫画のモブキャラにぴったりという平々凡々な女の子。 別に超絶美少女が悪いわけではないけれど、同じ名前のせいで平凡な彼女が酷い差別を受けてきたということは容易に想像できるだろう。 え? 平凡な子が可哀想? そんなの知ってる、ほっといて!! ……そう。何を隠そう、そんな可哀想なもう一人の倉内美奈とはこの私なのである。
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