気付いた時には落ちていた

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私の日常は散々だ。 男子生徒に〝倉内美奈〟と名前を呼ばれて振り向けば〝あ、君じゃなくて可愛い方の〟と付け加えられ、ラブレターを貰って呼び出されれば〝お前じゃねーよ!!〟とキレられる。 いやいやキレたいのこっちだから。同姓同名だからって好きな子の靴箱間違えんなよバカヤロウ!! 〝可愛い方の倉内〟と〝じゃない方の倉内〟 いつのまにか定着していたこの不名誉なあだ名。芸人でもないのに〝じゃない方芸人〟の気持ちがよく分かる。 どうしてあんな超絶美少女と同じ名前なんか付けたんだと両親を恨み、どうしてあんな超絶美少女と同じ学校にしたんだと神様を恨むこと早二年。 なんなのこのクソみたいな理不尽な現状。私なんか悪いことした? してないよね? なのになんでこんな仕打ち受けなきゃいけないの? ふざけんなっつーの! なんて思っていたのも束の間。残念なことに、この〝じゃない方〟の扱いにもすっかり慣れてしまった。最近では、まぁまだ〝可愛くない方の〟と直接的に言われないだけマシだろう、なんて無駄な超前向き思考(ポジティブシンキング)も備わってきたという始末。 感覚が麻痺しているのは自分でも分かってるけど……仕方ないじゃん。こうやって割り切っておかないと学校生活送れないんだからさぁ。 はぁ、と溜息をついてとぼとぼと廊下を歩く。 「俺さっき可愛い方の倉内さんと喋っちゃった!」 「は!? 抜けがけかよ!! ずっりー!!」 「あれはヤベーよ! 近くで見るとマジ天使!!」 どうやら今日ももう一人の倉内美奈は大人気らしい。窓際で興奮気味に語り合う男子生徒を一瞥し、再び溜息をこぼした。
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