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「倉内」
「は、はい!」
「なんつーか……ああいうバカな奴らの言うことなんか気にすんなよ」
「え?」
「倉内は倉内なんだから。お前らしくしてればいいんだ」
照れくさいのか、河西くんは私から視線を外しながら言った。私もつられるように視線を外す。
不良っぽい見た目から勝手に怖いイメージを抱いてたけど、河西くんは意外と良い人なのだ。
こないだも教科書忘れたらそれに気づいて見せてくれたし、たまに売店のジュース奢ってくれるし、何か悩んでたら相談に乗ってくれるし……こうやって、私のこともフォローしてくれるし。
「……うん。わかった」
なんとなく気恥ずかしくなった私は慌てて彼に話題を振った。
「そ、そういえば! 河西くん私に何か用だったんじゃないの?」
「……あー。そういやそうだった」
河西くんは左手に持っていたノートを差し出す。
「これ。お前のだろ」
「えっ、あ、私のだ! え、なんで?」
「なんか俺の机に置いてあった。誰かが間違えて置いたんじゃねーの?」
どうやら河西くんはこのノートを届けに追いかけて来てくれたらしい。ちょうど次の時間に使うノートだったのでありがたい。
「わざわざありがとね。河西くん次の選択うちの教室でしょ?」
「……別に。暇だったから届けただけだし」
それだけ言うと、河西くんは踵を返して歩き出す。次の時間は選択科目だ。私は教室を移動するけど、河西くんは自分のクラスで授業を受ける。それなのにわざわざノートを届けてくれるなんて。さっきのフォローといい、河西くんは優しいなぁ。
……本当に、私は彼の優しさに何度助けられたことだろう。感謝してもしきれないや。
あ、そうだ。授業が終わったらお礼にジュースでも買ってあげよう。河西くん、なんのジュースが好きだったっけ? 炭酸や果汁を頭に浮かべながら、私も教室に向かって歩き出した。
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