気付いた時には落ちていた

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その日の放課後。 委員会の集まりを終えて廊下を歩いていると、下駄箱のあたりで誰かの話し声が聞こえてきた。 「なーなー! 河西って倉内さんと仲良かったよな?」 「……は?」 突然出てきた自分の名前に咄嗟に物陰に隠れる。いやでも待って。彼が言う倉内さんはもう一人の倉内さんかもしれないし……。あれ? でも今の声ってもしかして岡田くんと……河西くん? なんで二人が一緒にいるんだろう。珍しい組み合わせだ。 「あ、倉内さんって言っても〝じゃない方〟の倉内さんね!」 「おっ前! アイツのことそういう風に言うのやめろって言っただろ!!」 怒ったような河西くんの声に私の肩がビクリと上がる。 「おーワリ、つい癖で」 「今度から気を付けろよ。……つーかなんで突然倉内?」 「んー、実は今日廊下でバッタリ会ってさ。俺、その時〝じゃない方〟って言ったこと謝ったんだよ。そしたら謝ってくれて嬉しいって笑ったんだけどさー。なんつーか、その顔がけっこう可愛かったんだよね」 予想外の言葉にドキ、と心臓が高鳴る。岡田くんは更に続けた。 「だから連絡先知りたいなー、なんて思って」 「は?」 「河西、倉内さんのアドレス知ってんなら教えてくんない?」 「……お前バッカじゃねーの?」 河西くんはハッと鼻で笑うと、さも当然と言わんばかりに続けた。 「倉内美奈が可愛いのは最初からだろーが」 ぶわっと体温が一気に上昇した。 ついさっき岡田くんに言われた〝可愛い〟なんて時の比じゃない。ドキドキを通り越してバクバクと鳴る心臓がうるさくて、周りに音が漏れてるんじゃないかと心配になる。
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