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「聞いていたのか……」
「ふふっ、だってあなたのセンチメンタルな顔なんて久しぶりに見たんですもの」
「そんな顔していたか…」
「えぇ、帰ってきてからずっと…
縁側で黄昏てるあなたをこんな近くで見ていた私に気付かないくらいずっとですよ」
「すまない、心配をかけた……
ただ私は何を人生で成し遂げ得たのだろうと思ってな……私の人生には大きな出来事も大きな幸せも何もなかったのだよ」
「………相変わらずあなたは馬鹿ですね」
「んっ……どういう意味だ」
「私はあなたと違って大きな出来事も幸せも人生でたくさんありますよ」
「まあお前は昔から何かと楽しそうだったからな……友達も多かったし……」
「初めてのお見合い、初めてのデート、初めての喧嘩、初めてのプレゼント、初めての同棲、初めての子供、初めての……」
「ちょっと待て……それって全部」
「えぇ、私の大きな幸せな出来事には全てあなたが隣に居ました
でも、おかしいですね?
私よりあなたが大きな幸せの数が少ないなんて」
「それは……大きなことでもないだろ……お前は私といたから幸せだったんじゃない……自ら幸せになることに長けているだけだ」
「フフッその幸せになるのが上手い私が一生幸せでいるために選んだ相手が目の前に居ますよ」
「………お前はこんな馬鹿真面目な男の隣に居たから幸せになれたと言うのか……?」
「えぇ、そしてこれからはあなたとの幸せな老後が待っています」
「幸せな老後……」
「だからこんなものは捨てちゃいますよ?」
「それは……いつの間に……」
「フフッ今更私と離婚しようなんて……本当馬鹿なお人……」
「子供はもちろん、孫だって高校生だ……老後くらいお前を自由にしてやろうと……」
「あなたのいない自由なんて薄暗くて冷たい牢獄と変わりませんよ
本当面倒なおじいちゃんですね……そんなとこも好きですけど」
「………お前こそ…本当物好きなばあさんだよ……でも……そんなお前を好きになって良かった」
……今も忘れない……
小さな小さな
私達にとっては
とてもとても大きい
大切な2人の思い出を
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