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『此の歌は運命の恋を歌った曲で、映画の素敵な出会いと、彼等が育んできた時間もイメージしたんです。原作も監督も実は私、大ファンで。あの素敵な運命を、私も少しでも表現出来たら良いなぁって思いました!主題歌に相応しい!って思ってもらえたら嬉しいです』  店頭に並ぶテレビから、今其れなりに話題となっている女性歌手のインタビューが聞こえてくる。これまた最近話題作家の作品が映画化するとかで、今は其の話題でもちきりといったところだ。  其の作品が、運命の恋に出会った男女、なんて、恋愛小説に於いて手垢に塗れているだろうテーマの所為だろう。此処のところ、テレビやネットでは「運命の恋」なんて話題が持ちきりである。  トーク系バラエティでも芸能人同士が運命の恋や、其処迄いかずとも恋愛話に花を咲かせて盛り上がっている。  笑いを取ろうとしてか、色恋沙汰に縁遠いイメージの芸能人達は茶々を入れつつも、何だかんだで殆ど妄想の域の“理想の恋愛”について語る。  昨今の傾向を一言で語れば、前述の通り。誰も彼もが、無論中には小馬鹿にしているヤツも、運命だの恋だのに飽和しているヤツもいるだろうが、兎に角表面上、及び流行としては、誰も彼もが恋、主に運命の恋に浮かれている、といったところだ。  所詮一時のブームであると分かっている。  上映前は話題作!大ヒット間違いなし!なんて謳われていた映画が、蓋を開ければ何時何処で公開していたかさえ分からぬ程大コケであったり、其れなりにヒットしても時の流れと共に“時代遅れ”に変わっていく。  大人気作品が大人気作品として、社会現象さえ巻き起こせる程に輝いていられる寿命は、1年とない。  だから其の僅かな期間を耐えれば良いだけ、と言えば、其れだけ、なのだが。 「あーあ、馬鹿らしくてやってらんないっす!もっと他の話題は無いんすかねぇ」  元より気の短いオレに、忍耐の文字は馴染みが薄く。  オレは1人、早々に不満を零した。
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