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余程苛立っていたのか、想像以上に大きな声が突いて出ていたが、幸いにも通行人達は自分の事に必死でオレの叫びを気に留めた風はない。
オレの方をちらちら見ていた何人かは、結局オレの性格なんて如何でも良いのか、オレが何をしても格好良い、で片付けてしまうつもりらしい。きゃー、なんて黄色い声が届いて、オレの気分を更に苛立たせ、且つ落ち込ませた。
中には声掛けちゃおうかなぁ、なんて恐ろしい事を口にしている2人組も居る。頼むから止めてほしい。
ただでさえオレは昨今運命の恋、運命の恋と騒がしく特集されて辟易としている。
そんなオレを気にも留めず、下駄箱に押し込まれる手紙及びプレゼントは量を減らさない。其れどころか今日に於ける運命論、素敵な恋愛とやらに感化されているのか、量を増やしている始末だ。
手紙もプレゼントも開封する事なくゴミ箱に直行させる為関係無いと言えば関係無いが、オレが不快感を抱いていると知りながら、如何して尚も此の方法に見込みがあると思うのか。
そして手紙は兎も角、食べ物さえ下駄箱に押し込む人間は何を考えているのか。恋愛に酔っていて何も考えていない、と思う方が良さそうだが、自己陶酔にオレを巻き込まないで頂きたいものだ。
ともあれ幼少期からそうした目に遭ってきたオレにとって、恋愛沙汰なんて不愉快極まりなく、運命の相手、運命の恋というのは馬鹿馬鹿しくて笑えもしない。寧ろ煩わしいから黙って欲しい。
そんなオレの胸中を見抜ける筈もなく。
話し掛けるなというオレの願掛けも虚しく。
オレに話し掛けようかどうか迷っていた2人組は、あのぉ、なんて声を掛けてきた。もとい、声を掛けて“きやがった”。
狙った様な猫撫で声。妙にシナを作って体をくねらす様といい、制服のボタンを無駄に開けて、下着や谷間を見せ付けようとしてくる様といい。
嫌悪感、嘔吐感を通り越して殺意さえ沸いてきそうである。
学校での怒涛のプレゼント地獄を全て処理し、ただでさえ疲れていたところへ、先の運命の恋を連呼するインタビュー。
殴りてぇ。出来るだけ事故に見せかけて。故意では無いと言い張れるだけの要素を存分に残して。
そう思う程苛立っていたオレにとって幸いな事に……普段であれば顔を顰め、ギリギリ迄無視を決め込むのであるが、此の時ばかりは幸いな事に、ケータイが着信を知らせて震えた。
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