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「電話出るからあっち行ってくんない?」 「えぇ~。わたし、電話が終わるまで待ってるよぉ?」 「うんうん!キミとお話したいから、いくらでも待っちゃうー!!」  其れで簡単に引き下がる人種だと、其れこそ毛頭思ってもいなかった。だから期待もしていなかったけれど、いざ現実に甘ったれた声で駄々を捏ねられ、此方の腕を捕ろうと香水をぶちまけ過ぎて異臭漂う腕を伸ばされれば、其れは其れとして不愉快にもなる。  触れたくも無い。振り払う為だとしても、汚らわしい。  オレは露骨に自分の腕を引き寄せ、話し掛けて来た見ず知らずの2人組を睥睨する。 「アンタ等、頭悪そうだけど耳迄悪いんすか?オレはあっちに行け、って言ったの。アンタ等みたいなのに待たれたって、不愉快極まり無いだけっすよ。虫唾が走るって、こういう事をいうんすね」 「はぁ!?」 「な、なにそれ!!」  オレの性分を知っているクラスメイト達は此れくらいでめげたりはしない。迷惑だけど。  でもオレの性分を知らない、ただみてくれだけで声を掛けてくる人間に此の方法は有効なのだ。  大抵ブリッコを忘れて逆ギレ気味にオレを罵倒し去っていくか、呆然と立ち尽くしてくれる。  今回も其の例に漏れず、先程の何倍も野太い低い声でヒステリック気味に叫び、オレが其の場から歩き出した後も何やら低俗な言葉で喚いている。  勿論気にもならない。無視だ無視。そうして情けない姿を世間に晒し続けてくれれば、不愉快な気持ちにされた分の仕返し程度には気も晴れる。  あわよくば担任や生活指導あたりに見咎められて、罰則を喰らってくれれば上々である。  さて。  そうした間も鳴り続けているケータイは、今となっては新たな悩みの種である。かと言って無視すれば自宅に突撃も厭わないだろう。  何方がマシかなんて、考える迄も無く分かりきっている。
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