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 果たして少年は何処迄オレの思惑を探ったか。ふるふると首を振った。 「いや、別に気にしてねぇよ。……つーか」  其処で1度言葉を切り、少年は立ち上がる。尻餅ついた体勢の時もそうであったが、やはり小柄である。  いや、タッパは其れなりにあるかもしれないんだけど、横が細い。何と言うか、多分其の所為で制服はきちんと着こなして着慣れている感もあるのに、サイズが大き過ぎるんだろう、制服に着られている感が否めない。  なんて本人に気付かれれば憤慨されても言い訳出来ない事を考えていたオレの前で、少年は悪戯を企む子供の様に、口の端だけを持ち上げた笑い方をみせた。 「きちんと前見て歩け、って言いたいなら言っても良いぜ?オレが殆ど前を見てなかったのは確かだしな」 「……正直、言いたいのはヤマヤマっすけど、アンタの制服見ちまうと躊躇うし、オレも前方不注意を指摘される側なんすよねぇ」  後、跳ね飛ばしちゃったのはこっちだし、とは本人の名誉の為に言わないでおいた。  衝突の衝撃から其れなりに少年は急いでいたのだろうと推測出来るものの、吹っ飛ばされたのは少年側でオレはびくともしていない、っていうのは少年のプライドを普通に傷付ける気がする。 「はっ、制服については其の儘返すっつーの。お前、制服こそ所謂名門じゃねぇけど、立ち居振る舞いで明らかだっつーの。其れに遠慮も躊躇いもいらねぇよ。お前が前方不注意だったところで、オレの方が輪を掛けていたのは事実だ」  何だろう、好印象だ。  少なくとも今迄に居なかったタイプの人間である。威張り散らすでもなくて、媚び諂うでもなくて。  無闇に腰が低くもないけど、無闇に偉ぶってもいないあたり、所謂“本物”の風格かと関心してしまう。  そんな、珍しい物を見たっていう気持ちから、ついオレはジロジロ少年を凝視していたんだろう。少年が居心地悪そうな苦笑を浮べる。 「何?やっぱ怒ってる?其れともオレの顔に何か付いてる?」 「あ、えっと、そんなに急いで何したかったのかなぁ、って」  苦しい。流石に言い訳にしても苦し過ぎるだろう。もっとマシな言い訳はなかったのかと嫌悪するものの、1度口から出してしまった以上は仕方ない。  半ば自棄を起こしているオレの眼前で少年はぷっと吹き出した。嘲笑ではない。如何にも楽しくて堪らない、といった風な笑い方。
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