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「えー、昨日まで皆さんは、上級の6年生のお兄さんやお姉さんに、帰りの通学路で付き添いをして貰って居ましたね? 5月に入った今日からは、お兄さんお姉さんの付き添いはなくなり、君たちは一人で家に帰って貰う事になります。良いですね?」 「はーい!」  先生の言葉に、一年三組の皆は元気に返事をする。その反応を見届けて、 「君たちはまだ小さいから、危ない事も多いです。だから、なるべく上級生にお兄ちゃんやお姉ちゃんが居る人、近所の仲が良いお兄さんやお姉さんが居る人は、一緒に帰ってもらうようにしましょう。そして上級生に一緒に帰ってくれる人が居なかったら、クラスのお友達と一緒に帰って下さい。わかりましたかー?」  とクラスの生徒に呼び掛けた。 「はーーい!」  と、更に大きな声で三組の子供たちは返事をした。 「それでは、終礼のホームルームを終わります。 起立!」 (ガタガタガタガタっ)  と生徒が椅子を引いて立つ音が響く。 「気をつけ!」  ビシ!っと背筋を伸ばす生徒。 「礼!」  三組の生徒が一斉に教壇に向かってお辞儀をする。それを見届けた先生は、 「皆さん、さようなら!気を付けて帰るんだぞぉ~!?」  と声をかけて、教室から出る生徒たちを優しい眼差しで見守っていた。  一年三組、清水ともかず君。  彼は隣町との市境に住んでいるため、クラスで一番学校から遠い生徒だった。  毎日毎日、家と学校の往復を約2キロの行程を6年間通い続けることになる。
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