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「アイリちゃん、おはよー!」
あの日も、内田君は私をハグしてくれた。いつもは立ったままだったんだけど、その日は私が座っていて。
頭を抱きかかえるようにされると、なんだかいつもの内田君じゃないみたいで、照れくさくて、“苦しいよー”と腕を解こうとした。
でも彼は“なんか背が高くなった気分ー”なんて言って離してくれなくて、私は少しの間、いつも自分が彼にするようになでなでされるはめになった。
“なにいちゃいちゃしてんだよ!”“うっちーってば立花さんのこと好きすぎ”
「そうだよー、俺とアイリちゃんは相思相愛なんだ」
皆に冷やかされても内田君はお構いなし。でも、私はそうじゃなかった。
恥ずかしかったし、内田君が私のことなんてなんとも思っていないのがわかるから。今、彼の腕の中でそれを感じているから。だから言ってやったの。
「そんなわけないじゃん。だって内田君の胸、全っっっ然ドキドキしてないもん」
そう言って、首に回った腕をぱしぱし叩いた。
皆笑ってくれたから、私も笑った。だって、本当のことだから。
私を抱き締めている間、彼の心臓は、とても好きな女の子を抱いている音じゃなかった。それなのに相思相愛だなんて…笑うしかないもの。
どうしてだろう。好きでもないのに、傷付いている自分がいた。そんな気持ちに戸惑っていた。
そのせいだろうか。その時、内田君が笑っていたかどうかが、ちっとも思い出せないの。
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