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「…あなた、優なの…?」
「そうだよ。綺麗になったね、悠亜」
「……どうして。…どうして何度も連絡をしたのに返事をくれなかったの?どうして私が悠亜だって直ぐにわかったの?」
立て続けに質問責めをすると彼は少し困った顔でぽそぽそとゆっくり話し始めた。
「頭がおかしいって思われるかもしれないけど信じてくれる?」
「……え?」
「実は僕はこの桜の木の精なんだ」
私は驚愕のあまり、口を閉口させていた。
「……やっぱり、頭がおかしいって思うよね」
「…そんな事無いっ!」
はっきりと言い切った私の姿を見て、逆に彼の方が驚いていた。
「…私は霊感とかそういう類いのは全く無いけど、優は人間離れした綺麗な容姿だし、何か薄々気付いたの。連絡を返せないのもそういった理由があるんじゃないかな…?」
ふふっと朗らかに笑う優。
その姿は十年前と全く同じで…。
「十年も連絡しない最低な男を責めもせず…。君は本当に優しいね…。悠亜には何でもご明察なのかな…?…そう、僕は桜の木の精だからこの場所から出る事は出来ない。だから連絡も出来なくて、ね…」
「……ごめんね」
と続けて謝る優。
「悠亜の事はこの十年、忘れた事は無かったよ。また会えて嬉しい」
そう言って優は悠亜の事をそっと抱き締める。
其処には以前、女の子と見間違えた少年の姿は無く、一人の立派な男性が立っていた。
「……僕の正体を知っても何で怖がらないの?人間じゃないんだよ?」
優は不安そうに私に問う。
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