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小さな苦笑いを浮かべたタカシは、静かに言葉を繋げた。
「そんな中アンタはますます現実逃避する。
オレは都内有数の高校をトップで卒業。国立大学の医学部に入って外科医となり、難しいとされていた手術も次々と成功させていく。
患者だったお偉い政治家センセのひとり娘に見初められて結婚。
可愛い子供がふたりも出来た」
薬指のリングがキラリと光る。
「随分とチンケな人生だが、アンタの乏しい想像力じゃ、これが限界だろう」
隆はますます顔を赤くして大声を張り上げた。
「みんなでボクを笑い者にする気だな!
性質の悪い余興だね・・やっぱり来るんじゃなかった…帰るよ」
くるりと向けられた背中は惨めに縮こまっている。
「また逃げるのか?アンタはそうやって逃げてばかりだ!」
「逃げるんじゃない!こんなくだらない遊びに付き合っているほど、ボクは暇人でもお人好しでもないからね」
タカシは喉の奥でくくっと笑った。
「いつも自分を庇う言い訳ばかりして・・ずっと逃げ続けてきた。
身体が弱いのは健康に生んでくれなかった両親のせい。
勉強が出来なかったのは病気のせい。
友達に虐められたのは助けてくれなかった教師のせい。
会社を首になったのは気の利かない上司のせい。
何もかも他人のせい。自分は決して悪くない」
振り返った隆の目は怒気を含み異様な光を放っている。
「その通りだ!ボクは悪くない!ボクはいつも被害者だ!」
「そうかな?
心臓の手術を怖がって、頑なに拒み続けていたのは誰だ?
せっかく担任が届けてくれた授業のノートを開きもしなかったのはアンタじゃないのか?
虐めにあっても仕返しを恐れ、泣き寝入りしていたのは?
あれだけボンミスを繰り返せば上司だって庇い切れなくなるだろ?
あんないい加減な男の保証人になったのは脅されて、断り切れなかったからだよな?」
いつしか隆の中の怒りは恐怖に変わっていた。
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