同窓会

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それでも精一杯の虚勢を張る。 「うるさい!黙れ!この嘘つき野郎!  助けてやるから同窓会に来いなんてメールを寄越して・・  からかって楽しんでるだけだろ!キミはいじめっ子だった寺田君?  それとも頭の良かった倉本君か?」 「オレは鈴木隆だ…オレはアンタ。アンタはオレ」 少し哀れむような光をキレイな瞳に湛えると、足元に散らばっていたグラスの破片を拾い上げた。 「証拠を見せてやるよ」 「証拠?」 隆がオウム返しに尋ねると、ゆっくりと頷いた。 「ちょ・・何を…」 止める間もなく、手にした破片を端正な顔に突き立てる。 頬がすっと切れ、血が滲む。 「いたっ!」 その瞬間、隆の頬に激痛が走った。 まるで刃物で切られたような…。 手で押さえるとヌルリとした感触が伝わる。 あわてて指先を見ると、赤く濡れていた。 「解ったか?オレがアンタでアンタがオレだ」 呪文のようにタカシが呟く。 「嘘だ!そんなの…有り得ない」 小さな体がガタガタと激しく震える。 その様子を眺めながらタカシは肩を竦めた。 昔あこがれていたトレンディ・ドラマの主人公そっくりの仕草で・・ 「まぁ信じる信じないはアンタの勝手だが、オレは事実をのべてるまでだ」 「本当・・なの?じゃぁボクを助けてくれるって言うのも?」 弱々しい声で隆が尋ねた。 おおよそ信じがたい話ではあるが、頬の痛みが夢でも芝居でもない事を実感として伝えている。 「あぁ・・助けてやるよ。  アンタが二度と自分を傷つけずに済むようにな」 隆はハッとして左の手首を押さえた。 無数についたケロイド状の蚯蚓腫れ。 何度試みても楽になれなかった傷跡。 タカシはにやりと笑うと、くるりと背を向けバルコニーの白い手すりに手を掛けた。 身を乗り出し、下を覗き込む。 「ちょっと高さが足りない気もするが…大丈夫だろう」 「…なにをする気?」 まさか…そんな事…? 向き直ったタカシは事も無げに言った。 「飛び降りるんだよ。オレが消えればアンタも消える。全ての苦しみから解放されるんだ」 再び両手で手すりを掴み、懸垂するようにぐっと体を引き上げる。 「じょ・・冗談でしょ?待ってよ」 隆はあわてて駆け寄ると、スーツの裾をグイっと引っ張った。
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