同窓会

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「やめてよ!そんな事」 「何で?アンタいつも言ってたじゃないか。こんな人生はもう嫌だ。  とっとと終わらせたいって」 「それは…言ったかもしれないけど…でも・・やっぱりヤダよ!  死ぬのはヤダ!」 泣き叫びながら、必死にタカシの体にしがみつく。 ボロアパートのかび臭い布団の中。 団子虫のように体を小さく丸め、死にたい死にたいと呟いていた事など今は頭の片隅にも浮かんでこない。 唐突に告げられた終焉から身を捩り、なんとか逃れようとする。 死にたくない・・生きていたい… 生への渇望が隆の全てを支配した。 生きたい…生きていくんだ! タカシは突っ張っていた両腕の力を弛めると、カツンと靴音を響かせ床に足を着いた。 ゆっくりと振り返り、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった隆の顔を見つめながらすっと右手を差し出す。 「え・・あの…」 いきなり目の前に差し出された手を躊躇いがちにそっと握ると、そこから不思議な温かさが伝わってくる。 隆は身の内に力が漲るような気がした。 長い間忘れていた”希望”という言葉が脳裏を過ぎる。 「あきらめたらお終いだ。  死ぬ気になりゃ、何だって出来るさ」 隆が小さく・・でも力強く頷くのを見て、満足そうな微笑みを口元に浮かべた。 不意にその輪郭が宵闇に滲むように崩れていく。 「待って!消えないでよ」 「もう大丈夫だ。オレがいなくてもアンタは立派にやっていける」 最後にニヒルな笑みをひとつ残し、その姿は跡形もなく消え去った。 ひとり残された隆は空を見つめたまま、呆然と立ち尽くしていた。 ボクに出来るんだろうか? ―――――… ブルンと大きく頭を振ると、唇を固く結ぶ。 握り締めた拳を胸に押し当てる。 大丈夫――― ボクはひとりじゃない。 ここに・・もうひとりのボクがいる。ボクを見守っていてくれる。 「死ぬ気になれば何でも出来る・・だよね?」 蒼々とした月を映し出す瞳には、少しだけ強い光が輝き始めていた。                  FIN
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