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わたしには、幼なじみがいる。
でかくて、無愛想。
いつも不機嫌そうな顔して、でも中身はそうでもなくて。
本当は温和で、体育会系ではなくインテリ。
いつも、本ばかり読み。
いつも、遠いとこを見つめてる。
夏島琴(なつしまきん)。
おじいちゃんが江戸っ子で、かっこいい名前なら任せろの結果らしい。
実際、かっこいいと思う。
中身は名前のとおりに爽やかではなく、どっちかというと、ねじれてるけど。
まぁ、うん、悪い奴ではない。
「何、ぶつぶつ寝言してんの。きもちわりぃ」
朝。
小鳥の鳴き声の代わりに、日ざしをさえぎって現れたのはキンの姿だった。
キンはいつも通りの不機嫌そうな顔。今はほんとに不機嫌なのだろ。
彼は背は一八〇を軽く越えて、その割には贅肉がないのでスマートには見える。だが、いつも鋭利な瞳のせいで厄介事をもらうことも多く、本当は草食系の中身な残念くん。
わたしと同じ、中二。
「おいコラ、何か俺のこと考えてそうだな。いいから起きろ」
と、シーツを引っ張り、奪いやがった。
私はへそも丸出しの、乙女としてはオイオイな格好で、流石に赤面する。
「ちょ、こらぁ! キン、何すんのよ。こら、勝手に人の部屋入らないでって言ってるでしょ!」
「お前が寝坊してるからだよ」
キンは、そう言って己の腕時計を指さす。時刻は七時半を越えていた。自転車で行ける距離とはいえ、八時の登校にはギリギリだ。
「ギャー、ギャー! あーもう、何で!? 何でわたしはこうも起きないの。もう、あっち行ってて着替えるから」
「起こしてあげたのに乱暴な扱いだな」
「おへそ見たくせにうっさい、ばーか!」
「んなの、誰もいらねーよ」
キーキー、と我ながら猿のように鳴くわたしと。
はいはい、と冷めた対応のキン。
あ、ちなみにわたしの名前は石塚(いしづか)ゆみ、だが。それはどうでもよくて。
問題はこの男、夏島琴である。わたしは、いつもキンと呼び捨てであるが。
「おい、早く行こうぜ。アホゆみ」
わたしが支度してる間、キンは玄関前で自転車に乗って待っていた。
こいつはどういう教育を受けてきたのか。
お母さんやお父さんはいい人なのに。どういう性格のねじれか。
わたしを呼ぶのに、いつもこうやって余計な一言をつけ加える。
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