第1章

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「あんたは、どうしてこう、わたしに対する敬意がないのかねぇ。昔はちっさくて可愛かったのに。わたしが守ってあげてたのに。うぅ、悲しいよ」 「………」 「あ、待って。ちょ、無視して先に行かないで!」  001  こんなんでも、女子からの人気は悪くはない。  悪くは、ない。  あぁ、うん。いいよ。人気あるよ。素直に言えばいいんでしょ、モテてる方だよ。 「ねー、ゆみぃ。あんた夏島くんと仲良いんでしょ」 「だから、何よ」  昼休み。  わたしは、女子のグループと食堂で食事中。  朝食もろくに食べず急いで来たため、お昼のカレーうどんをありがたく頂戴してるときにだ。  あーあー、何でかね。  世の中は、キンのことに夢中で。というか、どうしてわたしに奴のことを話してくるか。 「漫画みたいに、家が隣同士」「幼い頃からの付き合いの幼なじみ」「登下校だっていつもいっしょで」「人付き合いの少ない彼が唯一異性で仲良くしてんのって、あんただけなのよ」「そんな、うらやましい奴。周りがほうっておくわけないでしょ!」  冷や汗、たらり。  いや、そう言われましても。  ただ、隣同士なだけだしな。付き合いも、友人としての付き合いだ。  周りが熱狂するほど、素敵な関係ではない。  あいつ、わたしの名前変な風に呼ぶしさ。  002 「おい、ばかゆみ」  学校の廊下。  友達とあるいていると、突然うしろから声が。  あいつだ。夏島琴である。  奴が、なれなれしく、わたしの名前に余計なの付け加えて話かけてきたのだ。 「……あんたねぇ、ばかは余計でしょ。ばかは!」 「だって、ばかじゃん」 「ばかじゃないもん!」  こんな男がなんで、人気があるのやら。  世間の目とやらは腐っている。たいへん、腐っている。  キンは、休み時間は少ない男友達と談笑するか。  本を読んでいる。  本来はインテリで草食系だから当然なのだが。野性味あふれる外見でそれをやると、どうやら妙な色気というのがあるらしい。  それで、くらっとする女子も多い。 「お願い、石塚さん! あなた、彼と仲良いんでしょ!?」 「え、いや、えぇー」  わたしが、ラブレター係になるのも多い。  仲良いんでしょ。お願い。あなたなら。あなたは。あなただったら。  と、言われても困るのだが。
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