第1章

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 そして、奴の返事はいつもNOなので、それを伝え返しもしなきゃいけないので、労働は倍。しかも、フラれたときの恨みをわたしにぶつける者もいたりして、本当にたいへん。  はぁ、なんでわたしは、こうもあの幼なじみに振り回されなきゃならんのか。  いや、勉強で分からないことがあったら、聞いたり。  あと、買い物で重いものを持ってくれたりとか、その、助けてもらったりもするけど……うん。  003  その日、どういうわけか。  わたしは、学校が終わっても教室に残った。  誰もいない、教室。  夕焼けが部屋に入り、わたしだけの影法師をつくる。  わたしは、一人考えていた。  わたしは、あの男の何なんだろう。  というか、わたしはあの男のことをどう思ってるのだろう。  あの男?  もちろん、夏島琴のことだ。 「……ぁ」  気がついたら、ちょいと寝ていた。  机に顔をふして、豪快に寝ていた。  あぶなかった、このまま夜まで居残るんじゃないかと焦ったが。 「おい、あほゆみ!」  と、あの男の声が聞こえてきた。  キンだ。あいつ、いつも駐輪場で合流するから、いつまで経っても来ないわたしに苛ついて来たらしい。う、うぅ、悪いのは全面的にわたしだけど。でも、だからって毎度毎度ばかとか、あほって言わないでくれるかなぁ。地味に傷つくのに。 「ったく、こいつ寝てるのか。おい、ばか! あほ! ……あーったく」  うるさい、こうなりゃふて寝だ。  起こせるものなら、起こしてみろ。そんな罵倒なんかじゃ起きないぞと。  わたしは、そばに奴が近づいてる気配がしても、たぬき寝入りを決めたのだ。 「……ゆみ」  ばっ、とわたしは起き上がる。  視界に入るのは、目を見開くキンの顔。  にやぁ、と思わず口角をつり上げる、わたし。 「なんて言った? なんて、なんて言った? ねぇ、もう一回――あ、ちょ、ごめんってば!」  キンが、わたしの名前を呼んだ。  ばかもアホもなしに、素直にわたしの下の名前を呼んだのだ。  すごい驚いて、ちょっとからかい気味に言ってしまったのが悪かったかな。彼は赤面して、そそくさと教室から出て行こうとする。わたしは慌ててカバンをしょい、追う。 「ごめんってば、ごめん! でも、なんかうれしくて。ねぇ、もう一回。もう一回聞かせてよぉ」 「うるせーばか」  耳まで真っ赤にしながら、顔をそむけるキン。
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