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もう1つは、進路に関することだった。
元々、修士課程を終えた後の進路には学部時代から迷い続けていた。博士課程まで進むか、理系就職か、これもよくある話。とはいえどのみち生物や化学には関わるつもりだったが、先のような状態が続き、きっと研究は自分には向いていないんだなとネガティブに思うようになっていた。研究の道以外での就活、試しにしてみようかな、と思った。
教授たちに、防がれた。
有益な結果が出ないのに、就職活動なんて許せるわけがない。その時間をもっと実験計画や試料調製にでも費やせ。趣味や友人との約束を我慢してまで、研究してきたのに。本来は許されないことだが、残念ながら、これは日本のあちこちの研究室で普通に見られることでもあるらしい。疲弊しきっていた私には、もはや反発する気力すら残っていなかった。それが2月の辺り。
いっそこのまま実験に全てのエネルギーを傾ければ結果も出るのでは、そう思ってなんとか1ヶ月耐えてきたが、無理だった。そもそもこんな状態でまともに実験なんて手作業ができる訳もない。こぼす、割る、量を間違える。まるで学部生みたいなミスのオンパレードに、准教授や助教授たちはしっかりしろと冷たく言い放った。同期や先輩は、そもそもいない。
そして4月。私は入水自殺を決行することにした。
この国の大学院が、科学界が私を殺した。そう糾弾する遺書を、自分の部屋に残して。
私の犠牲の上で、せめて何かが変わることを願って。
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