敗北宣言。

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◇  レッスンに行くと案の定、話題は今朝の風馬たちのことで持ちきりだった。    更衣室の中も、番組中、ライブで踊ったデビュー曲に対して、 「キレが悪すぎる」 「フォーメーションばらばら」  などと非難する一群、 「かっこよかったなー」 「羨ましいよー」  と素直に祝福する一群、  そして。 「ユア! どーすんの? もう敵は全国、いや、全世界の女子だよ? 手の届かないとこに行っちゃったじゃん? もう、応援してたのに!」  と、あたしに追い打ちをかける乙女の群れ……。  吹きかけたばかりの制汗剤の、ローズやシトラスの香りに囲まれて、あたしはひきつった笑いを浮かべている。 「別に、発表あったの、先々週だし」  そう。発表のあった日、照れ笑いの風馬と拍手が、ずっと頭を離れなくて、ステップがおろそかになってしまった。  おかげで、先生に叱られて、初心者クラスの子たちに交じってレッスンの最後まで、「ポップコーン」という基礎ステップの練習をさせられたのだ。    あの日よりは、落ち着いている。  ただ、やっぱり圧倒的な距離は、感じてしまったけれど。 「ユア、それヘアスプレー!」  今さっきワキや背中に、スプレーしたボトルを見る。     
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