敗北宣言。

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『スーパーハード 無香料 24時間髪形キープ☆』 「べたついても、キレよく踊るための特訓だよ! 特訓!」 「ああ! 格闘家が重たいリストバンドつけるみたいな!」 「そうそう!」  あはは。  んなわけあるかーい。  自分の方が、デビューは先だと思ってた。  スクールの中でも、先輩たちにも褒めてもらっていたし、注目されてる感があった。  事実、東野コナのPVや、P-ガールズのイベントなどなど、すでにいくつもバックダンサーのお仕事をもらっている。  なのに。  まるで実績のなかった風馬が、先にアイドルグループとして本格的にデビューしちゃうなんて。 ――ユアはすごいな。オレも、絶対、ユアを追い越すよ。  いつもそう言って、スクールが終わったあとも、練習してた。  あたしも手指の表現と目線を教えてあげるっていって、一緒に付き合った。  場所はいつも同じ、駅ビルのケーキ屋さんが閉店したあとの自動ドアの前。  えんじ色のスクリーンカーテンが降ろされているから、ガラスにはっきり体が映る。 ――こう? ――違うよ、もっとお客さんにはっきりわかるように、顎をがっくん、って振って。  教えるのは、あたしだったのに。  先に立って歩いていた道が、あたしの分だけ急に途切れた。     
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