「桜は好きですか？」

私は地面から視線を戻しながら男に聞いた。
「彼女とは喧嘩の後、仲直りいたのかい？」
「いえ、彼女が出て行ってしまいそのままです。」男は先ほどとは違い力なくそう呟いた。
「そうかそれで彼女が好きな桜の木にいれば会えると思って一人で桜を見にきたのか。」私がそういうと男は無言で桜を見上げた。
その表情は私から見ると他に何かあるような、何か言いたそうにも感じられた。
私は思いつきのような感じで今夜はもう帰ろうと思い、男が桜を見上げている間にさりげなく桜の花びらで埋まっている地面を足で払った。そしてピンクの絨毯の中に一点だけ見えた宝石を埋めた地面の場所を確認のためしゃがみこんで見下ろした。
その時、目に入った光景に何か違和感を感じたのと同時に、音量を下げたラジオから行方不明者の女性の情報が私の脳内に入ってきた。口を開かない方がいいと思いつつ反射的に私は口を開いた。