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6 後日談
次の休日。
例のチョコのスペシャルバージョンを買うためにデパートへ向かった。
「スペシャル買ったら連絡して」
当たり前のように付いてきた悠は、目的のチョコ売り場へ着いた時に行列の長さを見てそう言った。そしてさっさと他の階に行ってしまう。
悠はおとなしく待っているのが苦手だ。そして素直にお願いする感じではなく、不遜な態度。それなのに憎めない。悠が可愛すぎるせいなのか惚れた弱みなのか。その両方だろう……。
仕方がなくひとりで並ぶ。女子やΩが多く並んでいる行列に。
気恥ずかしいが、しかたがない。
できるだけ目立たないようにして最後尾に並んだ。
ちらちら男子もいる。
彼らは好きな相手に渡すのだろう。
俺は自分でも食べる。もちろん悠も食べるが。
「カイト」
後ろからタツキの声がしたから、振り返るとタツキがいた。
「タツキ?」
パステルカラーのセンスの良い大人びた格好をしていた。
「チョコ、買いに来たの?」
そう言って近くまで来た。小学校の時と比べて身長も伸び、軽やかな雰囲気で、木藤が『妖精さん』と言っていたのがうなずける。
「こないだスペシャルのが買えなかったんだ」
それで悠にゴネられた。
「だから並んでるんだ」
クスっと笑い、楽しそうな笑顔でタツキは言う。Ωって、超能力でもあるんじゃないか? タツキに見透かされたような気になった。
「……そうだ」
俺がうなずくと、タツキが後ろに並ぶ。
「タツキも買うのか?」
木藤からスペシャルはもらっていたはず。
「僕はスペシャルじゃなくて、普通の方だけどね」
「普通のも並ばないといけないのか?」
「同じ列だよ」
タツキが指さした列の先にあるワゴンのケースには、普通のとスペシャルのが入っているようだった。
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