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やっぱり、紙で作られた本が好きだ。
いつものように、向かいの席にカオリとフユコが座っている。三人で新しくできたケーキショップの話をしていたら、ある駅に列車が滑り込む。
いた!蒼先輩……
スピードを落としていく列車の窓から、ホームに立つ背の高いその人を見つければ、トクンと微かに心臓が鳴った。
乗客が次々と列車に乗り込んでくる。
高校がある町の駅は、ここから二つ目。車内も、だいぶこみ合ってきた。
私はいつも、後ろから二両目の車両の真ん中辺りのボックス席に座る。
進行方向を背にして座ると、二つ先のボックス席の通路に蒼先輩が立つのだ。
私はここから、そうっと蒼先輩を見つめる。目が合ったりしないように、細心の注意をはらう。読んでいる文庫本で、自分の顔をガードする事もある。
最初は、無意識のうちに蒼先輩を見つめていた。そうしたら、一度バチッと目が合ってしまって慌てた。
それから蒼先輩を見るのは、水曜日と金曜日だけにしようと決めた。
他の日は、本を読んで意識が向かないようにしている。うまくいかない事が多いけど。
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