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「なんでって、そりゃ、桜の木の下には死体が埋まっているっていうのに釣られてやってくる人にドッキリ仕掛けたいに決まっとるやん。こうしてお兄はん釣れたから、万々歳や」
にっこりと笑う彼女に段々頭痛がしてきた。
「そういえば、お兄はん。学校はどないしたの? まさかサボリやったりして」
「わ、悪いかよ」
「いーけないんだ。いけないんだ。先生にゆーてやろー」
「放課後になんか裏山に言ったら皆に馬鹿にされるから、今来ただけだ。そういうお前こそサボリじゃないのか?」
「わし、桜の精だから、そーいうの関係ないねん」
また、冗談かと彼女を見ると、何処となく悲しそうな表情を見せた。
「この花がすべて散ったら、わし消えてしまうねん……」
「お前、それ、ほんと……」
余りにも切羽詰った声でいうものだから、俺は少し本気にして訊ねようとしたら、
「本気にした?」
表情をパッと替えて俺を見た。
「また冗談かよ」
「いっやぁー、お兄はん、引っ掛かりやすくておもろいなー」
彼女はけらけらと笑う。
すると、学校の終礼のチャイムが鳴った。
「さてと、わし、戻らんと。じゃあ、お兄はん、また何処かで」
そう言ってルンルン気分で彼女は去っていった。
「アイツは一体なんだったんだ」
俺はそんなことを思いながら、裏山を後にした。
次の日。
「大阪から転入してきた。白井だ」
先生からの紹介で、やって来た転校生は。
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