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妃奈扇と一緒に悩むフリをしながらも、私が買うものは決まっている。不動の王道(と私が決めつけている)、イチゴとカスタードのダブルホイップだ。メニュー表にはナンバー1とあるから間違いなく美味しいし、味の想像もつくからハズレはない。
カスタードクリームとホイップクリームの甘さが苺の酸味と混ざって、程よい甘さが口の中に残るのが堪らなく美味しくて大好き…というのは建前で、多分妃奈扇は期間限定の奇抜なモノを選ぶから、私が無難なものを選んでおけば例え不味かったとしてもこれで口直しが出来る…というのも建前で。
ただ単に、妃奈扇とクレープを半分こしたいだけ。堂々とシェアしても怪しまれないのは、女の子同士の特権だし。
ちなみに期間限定としてあるクレープは、リンゴとクルミとクリームチーズのはちみつレモンソースだった。それぞれ単体でなら美味しいと分かるのだけど、これが混ざった時にどんな味になるのか分からないのが恐ろしい。食べてみてハズレだと、例え他で良いことが続いていてもあっという間にブルーな気分へと変わってしまうから、何かと物要りな女子高生のお小遣いではクレープひとつ頼むのも真剣勝負なのだ。
ただ、自分だと滅多に買おうと思わない味を楽しめるから、妃奈扇の思い切りの良さというかチャレンジ精神というか、そんな部分は尊敬している。
「決めた!」
あっさりと決めた私に反して、うんうんと唸り続けていた妃奈扇が注文を決めたのは、ようやく次で順番が回ってくるという時になってからだった。いつもならさっさと決めてしまうのに、珍しい。
前に立っていた三人組の女の子たちが、チョコバナナにイチゴホイップにツナマヨというオーソドックスなものを注文する様子を眺めつつ、妃奈扇は今回もまた期間限定に釣られて冒険する…かと思いきや。
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