3限目 恋を捧げて愛を待つ

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「(うぅぅ、さっむーい!)」  教室内は暖房が効いているけど壁で仕切られた廊下は寒くて、扉を開けた途端に入り込む冷気のせいで粟立った腕をさする。  カーディガンやセーターの解禁日が過ぎたとはいえ、ブレザーの下に着るしかないから分厚いやつだと着膨れして見えちゃうのが難点だ。  美味しい秋の味覚に続いて冬のスイーツが出回ってるからただでさえ体重が気になるし、オシャレは我慢だなんて言うけど油断すると食べ過ぎちゃって、冬眠しないと消費しきれないんじゃないのかって不安になる今の時期。  部活を引退した事もあって運動不足を自覚している私は見た目を気にして薄手のカーディガンしか着れなかったけど、でもそれくらいの温もりで我慢出来るほど若くない。…いや!訂正!ぴっちぴちの女子高生だから!来年には卒業だけどまだ若いから! 「(…って、やばっ!急がなきゃ!)」  今年の夏は記録的猛暑だと伝えていた天気予報士もコートを着込んですっかり冬支度を始めた12月。  師走と言えど、生徒も走らないでいられるほど暇をしている訳じゃない。なぜなら私には、毎日欠かさずやるべき事があるのだから。  部活へと急ぐ野球部や、重い足取りで職員室へと向かう茶髪女子の横を忍び足ダッシュで駆け抜け、目指すは2階の生徒指導室。  この学校内でいっちばん人気の無い教室は、きっと今日も誰も居ない。
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