バラオの棘

16/17
前へ
/17ページ
次へ
   いったい、なんだったのだ。いったいなんなのだこれは。  あんな会話のあと、神原くんと二人で残されて、私はまだ混乱から抜け出せずにいた。 「…あの、」  なんとか声をかけようとしたら、神原くんが盛大に息を吐いて、その場に蹲った。 「えっ?あの、」  近付くと掴まれたままだった腕を引っ張られて、私もバランスを崩して倒れこむ。  ぎゅって抱きしめられた。 「ほんっとなにしてんの、きむら」 「ええっと、あれ、あの、陽くんは中学の同級生で、」 「知らないよそんなの、知ってるけど!なんなのマジで、俺のことからかってんの?」  言葉の端々に苛立ちを感じて、ビクリと震える。 「ご、ごめ……」 「……、木村は、俺のこと好きじゃないのかもしれないけど、ほんと、俺の前で他の男とああゆうことすんのは、やめてほしい」 「……え?」 「……うざいとか、言わないで。頼むから」  なんだか言葉に切実さが詰め込まれていて、私は目の前がぐるぐるするのを何とか抑える。 「い、言わない、けど」 「……けど、なに」  なに、と言われて、私はごくりと喉を鳴らして、先ほど浮上した可能性を恐る恐る口に出す。 「か、神原くん、私のこと好きなの?」 「はぁ!?」  間髪いれずに返事が返ってきて、また震える。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加