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「木村は何食べる?」
「あ、……チョコとバニラにする」
「またか」
神原くんは、ポップな感じのアイスを頼んでる。
私もだけど、頼むメニューはいつも同じだ。
「それ、そんなにおいしいの?」
「ん、食べる?」
スッとカラフルな色を差し出されて、ちょっとたじろぐ。
そんなのは、カップルみたいだ。
戸惑っていると、神原くんから「木村?」と声をかけられる。
照れてると思われるのが嫌で、焦ってアイスにかみつくと、カリとしたキャンディの甘さが口内に広がった。
「わ、」
「え?」
神原くんがびくっとして、顔を上げると目をそらされた。
「ほんとに食べると思わなかった」
「えぇ」
そんなことを言われてしまったら、私がばかみたいではないか。
少し赤くなってうつむくと、唇を指の腹で撫でられたので、思わず目を瞑った。
甘ったるいセリフはともかく、こういう接触にはいつまでも慣れない。
固くなっていると、遠慮がちに体温が離れていった。
放課後の教室でおしゃべりしていたころは、こんなことなかった。
神原くんは甘ったるいセリフより面白い話をしてくれたし、流れる空気はもっと気やすかった。
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