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「……なんで怒ってんの?神原が放置してたくせに」
陽くんが挑発するように言った。
その発言に私の方が目を剥く。
「それは、」
神原くんが言葉に詰まって、ぎゅっと手を握ってくる。
え、いいよそんなの、電話してなよ。なにこの状況。
私だけがついていけずに、この場の空気に戸惑っている。
「半端に構うならもう別れてやれよ。こいつ不器用なんだから」
陽くんのその言葉には、親しみが込められていて、少し申し訳なくなった。なんだかずいぶんと心配をかけていたらしい。
「……半端じゃないし、こいつって言うな」
むっとした様子の神原くんに、陽くんが軽く目を見開く。私も神原くんを凝視してしまった。
なんだそれは。
その発言は、なんだかまるで、
「神原って、エリのこと好きなのか?」
私の心によぎった可能性を、なんの衒いもなく陽くんが口にする。これだから脳筋は嫌だ。
「当たり前だろ。ていうかだからエリって言うなよ」
「……え、」
思いもかけない神原くんのセリフに、頭の中が真っ白になる。
同じくぽかんとしていた陽くんが、私より先に正気に戻って、私と神原くんの顔を見比べた。
「あーー、……ああ、そうなのか。悪い、オレ勘違いしてたわ」
きまり悪そうにぼりぼりと頭をかいて、首をかしげる。
それからなにか言おうと口を開いて、でも固まってなにやら考え込むと、小さく「うん」とうなずいた。
「オレ、帰るな。お前らは二人でもうちょっと話し合え」
一方的に、一人で納得して、「じゃ、マジで悪かった」と言って瞬く間に去っていった。
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