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バラオのいる場所はクラスの中心だ。もちろん位置的な話ではなく。なんていうか、『上』の人たちが集まって騒いで、参加してない人もみんながその場所を意識している、その感じ。
薄茶の髪の毛を揺らして笑う神原くんは、かっこいい。
白いシャツがいい具合にたるんで、無造作にズボンに突っ込まれている。みんなおそろいの制服なのに、妙にピタリとはまる。
それは、神原くんの近くで騒いでいるお友だちのラフなカーディガンやら、ふわふわの髪型やらも同じだった。
そこに熱い視線を送っている女の子たちだってそう。まつエクを駆使したぱっちりおめめにぽてっとした唇、色づいた頬に、綺麗な指先。
私が同じことをしてもああはならないだろう。
タカちゃんと二人、教室の隅でマンガをめくっているような私には、本来、神原くんみたいな人は、とても遠い。
タカちゃんはもう雑誌に夢中で構ってくれなくなったから、仕方なく机に突っ伏す。ほっぺたにひんやりとした感触が伝わって、気持ちよかった。
「木村ー」
不意打ちに呼ばれて、ビクリと肩を揺らす。
黒板に顔を向けると、神原くんが爽やかな笑顔で手を振っていた。
「これ、木村のじゃない?教卓の下に落ちてたけど」
ひらひらと振られているボールペンは確かに私のもののようだった。
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