バラオの棘

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「あ、ありがとう」  慌てて立ち上がって、ガタガタと机を鳴らして、なんとか神原くんのところまで辿り着く。  なんとなく視線が集まってる感じがして居た堪れない。 「はい」 「あ、…っりがとう、ほんと」  渡されるとき、手、触った。  ぎゅって握られた。 「前髪、切った?」 「あ、うん」  些細な変化を言い当てられて、片方の手で前髪に触れる。 「可愛いよ」  自然に落とされる褒め言葉に、けれどそれは予想通りだった。そのくらい神原くんがいろんな子に放つ言葉なのだ。  だから、ただ苦笑いを返した。  すぐそばにいた女の子が、横から神原くんの腕に絡みつく。 「バラオー、ねえこのピアス、どっちの色がいいと思う?」  まるで私なんかいないみたいに、スマホの画面を神原くんに見せる。  神原くんは「ごめん」と言うように私に笑いかけたあと、「どれとどれ?」って至近距離で彼女のスマホをのぞきこんだ。
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