バラオの棘

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 私はそそくさと逃げ出して、そしたら机にぶつかった。ガタガタ、かっこ悪い、恥ずかしい。もう、ほんとに、なんだかなぁ。  落ち込んだ気持ちで席に戻ると、タカちゃんがニヤニヤしていたので、とりあえず肩をはたいておいた。攻撃力は0だ。 「ねえねえあれヤキモチやかないの?」  タカちゃんの揶揄に、「バラオさまだもん」となんでもないことのように返す。  彼は誰にでも、特に女の子には優しく、過剰なほどに甘い。  歯が浮くようなセリフを、平気な顔で口にする。  少女マンガの世界に生きる、生粋の王子さまなのだ。  スカートの中のスマホが、小さく震える。  ついさっき話した神原くんからのLINEだった。 『今日、放課後空いてる?』  ちらりと前を向くと、神原くんがにこりと笑った。 ◇◇◇
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