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間が持たなくなった私は、手に持っていたビニールをとっさに掲げた。
「さっきアイス買ってきたんだ、ピノ。神原くんも食べる?」
そうやって無理やり話題を変えると、神原くんはパチパチと二回瞬いた。それからまた笑顔を作る。
「ありがとう、もらう」
前後の席に座って、神原くんがこっちを向く。
「いただきます」
行儀よく言ってから、アイスを一つつまんで口の中に放り込む。
口の中いっぱいに冷たい甘さが広がって、しゃべれなくなる。それは嫌な沈黙ではなくて、アイスを頬張った顔を見合わせて、お互いちょっと笑った。
さすがに神原くんのほうが先に食べ終わる。
「木村さ、さっき俺が机蹴るの見てたよね」
「……ッケホ」
意外な言葉に思わず咳き込んでしまうと、神原くんは少し意地悪そうな顔になっていた。
おお、さすがバラオ。そういうところも少女マンガっぽい、などと思う。
「見なかったことにしたほうがいいかと」
「うん、俺もそうしてくれてるんだろうなって思ったんだけど、すごい普通だからなんか気になっちゃって」
神原君が眉を寄せて首を傾げると、サラサラの髪も一緒に揺れる。
その目にはーーなんだろう、期待のようなものがあった。
先を伺うように見つめると、一拍ののち口を開く。
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